糸リフトは吸収されたら効果もなくなる?2年間追跡した研究から考える「糸リフト+ヒアルロン酸」

Director's Column

糸リフトは吸収されたら効果もなくなる?
2年間追跡した研究から考える「糸リフト+ヒアルロン酸」

たるみ治療の正しい知識を、わかりやすくお届けする「院長コラム」第18回
院
執筆・監修:宮﨑 修平(THE LIFT CLINIC FUKUOKA 院長/医学博士)
論理と医学的根拠に基づく診療を大切にしています。医学論文をもとに、糸リフトについて発信しています。

「糸リフトは、糸が溶けたら効果もなくなるのでしょうか?」糸リフトを検討されている患者さんから、よくいただく質問のひとつです。

2025年、この疑問を考えるうえで興味深い研究[1]が報告されました。PDO(ポリジオキサノン)糸による糸リフトとヒアルロン酸を組み合わせた治療を行い、その変化を2年間にわたって追跡した研究です。

結論を一言で

韓国人11名に架橋ヒアルロン酸とPDO糸の複合治療を行い、24か月間追跡した研究では、中顔面幅・下顔面幅の有意な減少が24か月後も確認され、11名中9名が満足または改善を示しました。PDO糸やヒアルロン酸が体内で吸収された後も変化が残っていた点が興味深いですが、11名の小規模研究・対照群なし・複合治療という限界があり、「糸リフト単独で2年間効果が持続する」と結論づけることはできません。

CONTENTS
  1. 顔の老化は「ボリューム減少」と「下垂」が同時に起こる
  2. ヒアルロン酸は「顔全体を膨らませる」のではない
  3. 11名を2年間追跡。3D画像で顔の変化を評価
  4. 2年後も顔の輪郭変化が確認された
  5. 糸が吸収された後も、なぜ変化が残るのか?
  6. 「糸リフトは2年間持続する」という研究ではない
  7. まとめ|たるみ治療は「足す」と「動かす」を組み合わせて考える
  8. よくある質問
  9. 自由診療に関する重要事項
  10. 参考文献

1. 顔の老化は「ボリューム減少」と「下垂」が同時に起こる

顔の老化は、単純に皮膚がたるむだけではありません。加齢に伴い、皮膚・脂肪・筋肉・骨などさまざまな組織が変化し、中顔面では脂肪組織の位置も変化します[1]。

その結果、頬のボリュームが失われたり、組織が下方向へ移動したりすることで、顔全体の立体感や輪郭が変化していきます。

そこで今回の研究では、ヒアルロン酸で「ボリュームと支持を補う」、糸リフトで「下垂した組織を移動させる」という、役割の異なる2つの治療を組み合わせています。

2. ヒアルロン酸は「顔全体を膨らませる」のではない

ここも今回の研究で興味深いポイントです。ヒアルロン酸は頬全体を膨らませるように注入したのではなく、上部の前内側頬部に注入し、retaining ligament(支持靱帯)を支持してリフティングの張力を作ることを目的としていました[1]。そのうえでPDO糸を組み合わせています。

つまり、単純に「足りないところをヒアルロン酸で埋める」という治療ではありません。顔の立体構造を支えながら、下垂した組織を適切な位置へ移動させる。この考え方は、たるみ治療を考えるうえで非常に重要です。

3. 11名を2年間追跡。3D画像で顔の変化を評価

研究対象は29〜70歳の韓国人11名です[1]。全員に架橋ヒアルロン酸とPDO糸による治療を行い、治療前と6か月、12か月、24か月後に評価しました。

さらに、写真だけではなくMorpheus 3Dという3D画像解析システムを使用して、顔の幅の変化を数値化しています。

4. 2年後も顔の輪郭変化が確認された

結果は興味深いものでした[1]。平均の顔幅は治療前と比較して24か月後に、次のように有意に減少しました。

測定部位治療前24か月後
中顔面幅149.27mm145.00mm
下顔面幅130.36mm117.27mm

さらに11名中9名が、24か月の経過で満足または改善を示したと報告されています。論文には、治療前、6か月、12か月、24か月後の3D画像も掲載されており、時間経過による輪郭変化を視覚的にも確認できます。

5. 糸が吸収された後も、なぜ変化が残るのか?

ここが今回の研究で最も興味深い部分です。PDO糸は永久に顔の中に残るわけではありません。論文では、PDO糸は一般に約6か月以降に吸収され、今回使用されたヒアルロン酸も12〜16か月程度で吸収されていくと説明されています[1]。

それにもかかわらず、今回の研究では24か月後にも輪郭の改善が観察されました。著者らはその理由として、治療後に生じる新しいコラーゲン形成(neocollagenesis)や組織のリモデリング、組織支持が関係している可能性を考察しています。PDO糸の周囲ではコラーゲン産生が促され、組織を支持する構造が形成されることも過去の研究から報告されています。

つまり、「糸が残っている期間=美容効果が存在する期間」とは限らない可能性がある、ということです。

6. 「糸リフトは2年間持続する」という研究ではない

ただし、この研究結果の解釈には注意が必要です。今回の研究はわずか11名を対象とした小規模な研究で、全員が韓国人、さらに対照群もありません。また、「糸リフト単独」ではなくヒアルロン酸との複合治療です[1]。

したがって、この論文から「PDO糸リフトの効果は2年間持続する」と結論づけることはできません。一方で、吸収性の材料を使用した治療後にも24か月時点で形態的な改善が観察されたことは、糸リフト治療を考えるうえで興味深い結果だと思います。

なお、この論文には2025年10月に訂正(Erratum)が出ており、著者全員が今回使用されたヒアルロン酸製剤・糸の製造元企業の臨床アドバイザーを務めていたことが開示されています。研究結果自体の数値が訂正されたわけではありませんが、利益相反の情報として押さえておくべき点です。

糸リフト
ヒアルロン酸注射

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7. まとめ|たるみ治療は「足す」と「動かす」を組み合わせて考える

  • 韓国人11名に架橋ヒアルロン酸とPDO糸の複合治療を行い、24か月間追跡した研究
  • 中顔面幅(149.27mm→145.00mm)・下顔面幅(130.36mm→117.27mm)が24か月後も有意に減少していた
  • 11名中9名が24か月時点で満足または改善を示した
  • 材料が吸収された後もコラーゲン形成・組織リモデリングにより変化が残った可能性がある
  • 小規模・対照群なし・複合治療という限界があり、糸リフト単独の持続効果を証明したものではない

顔の老化では、ボリュームの減少と組織の下垂が同時に起こります。だからこそ、ヒアルロン酸だけ、糸リフトだけ、と一つの治療ですべてを解決しようとするのではなく、どこにボリュームが不足しているのか、どの組織が下垂しているのか、どの方向へ組織を移動させるべきなのかを考えることが重要です。

今回の研究は、ヒアルロン酸による構造的な支持と、PDO糸による組織のリポジショニングを組み合わせるという、たるみ治療の考え方を示した興味深い報告です。治療方法そのものだけではなく、一人ひとりの顔の構造と老化の原因を診断し、適切な治療を組み合わせることが、自然なたるみ治療には重要だと考えています。

8. よくある質問

Q糸リフトは糸が吸収されたら効果もなくなりますか?
A今回ご紹介した研究では、糸やヒアルロン酸が吸収された後の24か月時点でも輪郭の変化が確認されており、糸の周囲で促されたコラーゲン形成などが関係している可能性が考察されています。ただしヒアルロン酸との複合治療の結果であり、糸リフト単独での持続効果を証明したものではありません。
Q糸リフトとヒアルロン酸はどちらか一方でよいのですか?
Aヒアルロン酸はボリューム不足を補う治療、糸リフトは下垂した組織を移動させる治療で、役割が異なります。顔の状態によっては、両方を組み合わせることでより自然な仕上がりを目指せる場合があります。
Qこの研究の結果はそのまま信頼してよいですか?
A興味深いデータですが、11名という小規模な研究で対照群もなく、著者は使用製品の製造元企業の臨床アドバイザーを務めていたことが訂正情報として開示されています。今後、より大規模で独立した研究による検証が期待されます。

9. 自由診療に関する重要事項

当院の糸リフト・ヒアルロン酸注入について

糸リフト・ヒアルロン酸注入はいずれも自由診療(保険適用外)です。効果には個人差があり、すべての方に同様の結果を保証するものではありません。

主なリスク・副作用:腫れ、内出血、痛み、挿入部の凹凸・陥凹、左右差、感染、血管損傷(まれ)などが生じることがあります。多くは数日〜数週間で改善しますが、まれに追加処置が必要になる場合があります。

治療について:効果の持続期間には個人差があり、使用する製剤・糸の種類、施術部位、たるみやボリューム不足の程度によっても異なります。当院では診察のうえ、お一人おひとりに適した治療の組み合わせをご提案しています。

10. 参考文献

  1. Wan J, Park HJ, Choi HS, Yi KH. A Pilot One and Two-Year Prospective, Blinded Clinical Evaluation of Efficacy, and Safety of Combined Treatment With Crosslinked Hyaluronic Acid Dermal Filler and Barbed Polydioxanone Suspension Threads for Mid-Face Contour Enhancement. Journal of Cosmetic Dermatology. 2025;24(2):e16700. doi.org/10.1111/jocd.16700(2025年10月、利益相反の開示に関する訂正あり:doi.org/10.1111/jocd.70506)
この記事の執筆・監修
宮﨑修平 院長
宮﨑 修平
THE LIFT CLINIC FUKUOKA 院長 / 医学博士

「たるみ治療のかかりつけ医に。」を掲げ、流行や感覚だけに頼らず、論理と医学的根拠に基づく診療を重視しています。診察・アセスメントを丁寧に行い、一人ひとりに適した治療を考えます。

  • 美容外科医 / 糸リフト・たるみ治療に特化
  • 医学博士/循環器内科専門医として慢性炎症・動脈硬化の研究に従事
  • 国内外の医学論文をもとにエビデンスに基づいた美容医療を発信
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